ヘモグロビンだけでは分からない鉄欠乏 - フェリチン検査の意義


 
1990年春秋に慶應義塾大学体育会部員417名(男子330名,女子87名)を対象として末梢血検査およびフェリチンの測定を行なった。

HGB の平均値は 男子 14.8±1.0g/dl, 女子12.9±1.3g/dlであり、またフェリチン値は男子 127.6± 66.3.ng/ml, 女子50.7±53.3mg/ml であった。

鉄欠乏性貧血の診断基準をHGB が男子13g/dl未満, 女子1.2g/dl未満, フェリチンが50ng/ml 未満とすると,それを満たす頻度は男子 1.5% (5名), 女子11.5% (10名) であった。

ヘモグロビンと血清フェリチンとの関係を見ると(図2), ヘモグロビン値が正常範囲であっても血清フェリチン値が50ng/ml 未満の部員は男子の9.1% (30名), 女子50.6% (44名)にみられ、女子の過半数が潜在性鉄欠乏性貧血であると判断された。

このような潜在性鉄欠乏性貧血を有する部員は激しいトレーニングを継続することによ顕在性の鉄欠乏性貧血に進行する可能性があり、今回の検討では全体の21.3% (89/417)の者が鉄分の摂取を増やすための栄養指導ならびに鉄剤投与による鉄欠乏状態の改善が必要であるという結果が得られた。

 引用:血清フェリチンの測定の意義 慶應保健(第9巻第1号,1990)