鉄欠乏の検査で耳にする「フェリチン」と不調の関係
なぜ血清フェリチン測定が必要?
本来あるべき体中の鉄量が不足することによって起こりえる身体的な不調には、疲れやすい・動悸・息切れ・頭痛・肩こり・朝起きられないなどの症状があります。 また、イライラしやすい・注意力低下・うつ・不安症などのメンタルに関係していることも判明されています。 そこで今回は、そもそも何故フェリチン検査が必要かと、その基準値、鉄需要並びに理想値を説明します。
フェリチンとは
鉄が足らなくなると貧血になるのはよく知られています。 知られていないのは、鉄を貯蔵する『フェリチン』と呼ばれる予備鉄の存在とその役目です。

フェリチンとは、微量金属元素でミネラルに分類される栄養素の『鉄』をおよそ4,500個を包んだ高分子鉄タンパクのことです。 貯蔵鉄とも呼ばれ全身に分布し、鉄を必要とする鉄需要が起きると、中の鉄はトランスフェリチンという別の鉄タンパクに載せ換え血中に放出し、最後に細胞に取り込まれ、細胞ごとの鉄代謝が行われます。
鉄代謝は多岐に渡り、胎児や乳幼児時期の脳神経細胞生成、DNA合成、酸素を運ぶヘモグロビン生成、脳神経伝達物質、抗酸化物質カタラーゼ生成、また、美肌や髪・骨の元になるコラーゲン生成など、知られていない重要な代謝に関わります。
そのため鉄を蓄えておくフェリチンの存在は極めて重要で、フェリチン不足は鉄不足になり、これら代謝にダイレクトに影響し、不調や病態を引き起こします。
フェリチンと血液中の血清フェリチンは相関があり、最も正確にフェリチンを把握する方法は血清フェリチン検査です。
フェリチンが低値を示す病態は、鉄欠乏症しかありませんので、低値を示すと鉄欠乏は確定します。
血清フェリチン値は悪性腫瘍や肝臓障害などの炎症で、貯蔵鉄量とは無関係に上昇しますので、同時に体内炎症反応CRP検査は必須となります。
炎症反応がなければフェリチン値は正当といえます。
フェリチンの基準値と理想値とは?
不定愁訴や身体・メンタルヘルスの不調原因不明とされるケースが多々あります。 検査をしても、結果が基準値内であれば、問題なしとみなされるからです。
その様な場合は、フェリチン値を検査すると明確になります。
ただし課題は炎症があると正確なフェリチン値は分からなくなります。
まずはフェリチンと鉄関係検査です。
血清フェリチンの基準値は女性の場合は、検査機関によって異なりますが、おおよそ16〜160μg/ml程度です。
異なる検査機関ではさらに低い場合もあります。
フェリチンは貯蔵鉄ですから、どれだけあれば十分かは、各個人の性別・成長期・年齢、特に女性は生理・妊娠・出産状況によって変わります。
全身の代謝と関係するからです。
代謝が盛んであれば鉄需要は増し、多くの貯蔵鉄が必要となります。
特に妊娠前の女性と、妊婦、産後婦は要注意です。
また生後直後赤ちゃんのフェリチン値は高く、数百を示す場合もありますが、成長に伴い多くの鉄が必要となり、鉄欠乏になりやすく、鉄不足のお母さんから生まれた赤ちゃんは、鉄不足になる傾向があるからです。
次に鉄の需要が増すのは、二次性徴期と言われる、児童から思春期の期間です。
あるべき理想値は、鉄需要で異なることが前提ですが、有経女性の場合は50以上で80程度が好ましいと言われています。
男性は100以上で150程度と言われています。(医師により見解は異なり、女性は100以上、男性は200以上とも)
なお血清フェリチンは体の中の炎症にも反応します。鉄を含む食事をとっていない、鉄剤や鉄サプリを飲んでいないにも関わらず、血清フェリチンが高い場合は、疾患が疑われます。
図はフェリチン値の分布ですが、疾患で高値を示します。
CRP検査が必要な理由です。
鉄過剰
しばしば鉄過剰が話題になります。
どの様な課題と原因については?
