フェリチンとは?
鉄の働きとフェリチン貯蔵鉄とは何か?なぜ体内炎症反応CRP検査は必要か理解しましょう

知られていない鉄の働きと代謝からみる不調との関係


鉄が必要な代謝は多岐に渡ります。これを知ると代謝と不調の関係が分かります


 
代謝とは、細胞の再生や様々な物質の生成を起こすための化学反応のことです。
化学反応にはビタミン類や、鉄などの微量金属元素(いわゆるミネラル)が必要です。
鉄を必要とするのが鉄代謝で、下記は鉄代謝の例です。

⚫︎ 酸素を運ぶヘモグロビン生成
- めまいなど貧血症状が出ます、減り続けると生命維持が出来なくなります
⚫︎ 脳神経伝達物質生成
- セロトニン、ドーパミン、メラトニンなどの生成不足になり、メンタルヘルスに不調をきたします
⚫︎ ミトコンドリア内でのATPエネルギー生成
- 足りないと冷え性になり運動能力が衰えます
⚫︎ 胎児や乳幼児時期の脳神経細胞生成 - 不可逆的な発達障害に関係すると言われています
⚫︎ DNA合成
- DNA合成や複製を行う酵素に必要で、足りないと細胞再生周期、細胞の成長・分裂に影響します
⚫︎ 抗酸化物質カタラーゼ生成
- 免疫力を高めます
⚫︎ 筋肉生成
- 足りないと筋肉生成が滞ります
⚫︎ 肌や髪・骨の元になるコラーゲン生成 - 足りないと肌・髪・骨再生が衰えます

など、知られていない重要な代謝に関わります。隠れ貧血は鉄不足・鉄代謝の衰えのサインです!決して放って置かないようにしましょう。

 

鉄不足になる理由

鉄不足になる理由は性別と、年齢、妊娠など個人の生理的な条件で異なり、また食に依存します。

鉄不足になると、貧血対策のヘモグロビン生成が優先されます。
フェリチンから鉄をどんどん使い、ヘモグロビン生成をするため、ヘモグロビン値は維持されます。

この状態ではフェリチンは相当減っており、すでに鉄不足状態にありますが、ヘモグロビン値は基準値を超えるため貧血診断はされず、鉄不足にあるとの認識は医師と本人にも乏しく、対策が遅れ鉄不足は進みます。


 
年齢や生理的条件での鉄不足になる原因
⚫︎  胎児の時から鉄不足は始まる可能性があります。妊娠25週目ぐらいに母体の鉄は胎児にうつりますが、妊婦のフェリチンが低いと胎児のフェリチンにも影響します。
⚫︎  月齢6ヶ月からは、人生で最も身体的な成長が著しくなり、母体からの鉄移行で十分なフェリチンが蓄えられていない場合、鉄が豊富な母乳や鉄強化のミルク・離乳食でなければ、相対的に鉄は不足します。
⚫︎  児童年齢は、家庭での鉄不足の食を通じ、鉄欠乏は母親から子に受け継がれます。
⚫︎  第二次性徴期の児童は、同様に体の成長に鉄量が追いつかないと同様な状態となります。
⚫︎  思春期では、女性で最も鉄欠乏が多くなります。生理で鉄を失いますが、鉄を多く含む肉類を避ける傾向が高い女子高校生は、フェリチンは下がり続けます。 100mlの血液を失うと、おおよそ40mgの鉄を失う計算です。
⚫︎  社会人で一人暮らしは鉄欠乏になりやすい傾向があります。コンビニ食、カップ麺を含む加工食品、冷凍食品など、糖質中心で栄養素の偏りが激しく、鉄の補充は低くなります。
⚫︎  妊娠すると、フェリチンが一気に下がります。これは胎児に鉄が移行されるためです。半数の妊婦は貧血となり、一割以上の産後婦は産後うつになります。
⚫︎  産後も鉄は母乳を通して赤ちゃんへ移行します。フェリチンはますます下がります。
⚫︎  高齢者は性別を問わず、一割以上の人が鉄不足になります。閉経後であっても体内に炎症や出血がある場合は鉄不足になります。
 

貯蔵鉄 - フェリチンとは?

フェリチンとは何かを理解しましょう!


 
微量金属元素でミネラルに分類される栄養素の『鉄』をおよそ4,500個を包んだ高分子鉄タンパクのことです。
貯蔵鉄とも呼ばれ、鉄不足に備えて予備の鉄を蓄えます。

食事やサプリで摂った鉄は、胃で消化し腸で吸収され、フェリチンに貯蔵されます。これは鉄が飽和するまで蓄え続けます。

フェリチンは全身に分布し、鉄を必要とする鉄代謝需要が起きると、中の鉄はトランスフェリチンという別の鉄タンパクに載せ換え血中に放出し、最後に細胞に取り込まれ、細胞ごとの鉄代謝が行われます。

鉄代謝で必要な鉄の量が貯蔵鉄量を上回ると、フェリチンは減り続け、供給が間に合わなければ鉄代謝は滞ります。
フェリチンの減少は鉄代謝に必要な鉄量が不十分となり、これら代謝機能にダイレクトに影響し、不調や病態を引き起こします。
そのため、鉄を蓄えておくフェリチン量を把握しておくことは極めて重要で、体にどれくらい鉄の余裕があるか推定でき、不調が鉄代謝不足によるものかを知る大変重要な指標です。

フェリチンと血液中の血清フェリチンは相関があり、正確にフェリチンを把握する最も有効な方法は血液フェリチン検査です。

なおフェリチンが減る主な要因は、月経を含む出血、成長が著しくなる成長期(胎児、乳幼児、第二次性徴期の児童)、鉄の吸収阻害、アスリートの激しい運動などです。
 

フェリチン値の読み方とフェリチン値の確定の注意・CRP検査

臨床検証 炎症・腫瘍がある時のフェリチン値分布


フェリチンが低値を示す病態は、鉄欠乏症しかありませんので、低値を示すと鉄欠乏は確定します※。
なお、低値とは最低基準値ではありません。基準値内であっても鉄欠乏の方は多くいます。ここに気をつけて下さい。

フェリチン値の分布 vs.炎症や腫瘍がある場合のフェリチン値の分布


 
血清フェリチン値は悪性腫瘍や肝臓障害などの炎症で、貯蔵鉄量とは無関係に上昇します。
そのため、フェリチン値のみを見ると、十分な値があるように見えても、実は偽高値であった実事例があります。
この場合、同時に体内炎症反応CRP検査を行い、炎症反応がなければフェリチン値は確定とみなすことが出来ます。

逆にCRP無しのフェリチン値は偽高値の疑いがあり確定が得られず、フェリチン検査の意味は無いといえます。


「フェリチンの数値だけを見ることの危険性」
...つまり炎症やがん存在すると、フェリチンは貯蔵鉄を反映しない検査結果を示すことになります。
...フェリチンが300ng/dl以下であっても、炎症などが存在していることを疑う必要があるのです。(引用:最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 溝口徹医師薯
※ 大分大学医学部腫瘍・血液内科