なんとなく慢性的な不調、朝起きられない、動悸、息切れ、不定愁訴、イライラ、やる気が出ない、不安症、鬱、発達障害、多動性などメンタル不調
これらの症状を訴えると、一般の臨床医療機関(病院やクリニック)ではまず貧血を疑い、血液検査を行います。

見逃される鉄欠乏
※一般の臨床内科診療の場合です
検査項目の課題

貧血の標準検査項目は、血中のヘモグロビン濃度や赤血球の大きさや割合などから判断されます。
検査結果は基準値で診断されます。
基準値を下回ると貧血診断となりますが、基準値に収まっていると貧血では無く鉄欠乏診断はされません。
フェリチン検査は標準の検査項目にはないため測りません。
これが、最初の見逃しです。
なお、この場合、様々な他の検査をしますが原因はわからず、原因不明の不定愁訴との診断となります。
原因不明なので対処は生活指導などとなり、また時にはメンタルを疑われ、心療内科診察を勧められることもあります。
見逃される潜在性鉄欠乏
貧血は血中の酸素を運ぶ赤血球の中のヘモグロビンの減少を指し、鉄欠乏が最も進んだ病態のことです。
貧血に至らない鉄欠乏を潜在性鉄欠乏と呼び、隠れ貧血とも言います。
一般的な臨床医療病院では、鉄欠乏は貧血と認識し、潜在性鉄欠乏検査が欠けていることが、そもそもの課題の原因となっています。
疑うべきは潜在性鉄欠乏である貯蔵鉄フェリチン不足!
鉄欠乏の進行は4段階
鉄不足になると、まず貯蔵鉄フェリチンから鉄を取り出し、鉄供給が始まります。
ヘモグロビン代謝を優先しますので、貧血検査には引っかかりませんが、フェリチンを測るとすぐに分かります。
鉄欠乏が進むと、貯蔵鉄はさらに減って行き、鉄欠乏の症状が出ます。
さらに進むと貯蔵鉄は空っぽになり貧血状態になります。
フェリチンを測らない検査は鉄欠乏を見逃します。
フェリチン基準値判断のワナ
フェリチン基準値とは?
例えフェリチン検査をしても異常無しになるもう一つの理由
例えフェリチンを検査しても、一般の病院での判断は基準値を使います。
日本の女性のフェリチン値分布は低く、最低基準値は10〜12程度です。それ以上であれば正常と診断されます。
最低基準値を診察判定に使うことが、フェリチン検査の基準値診断の罠であり、鉄欠乏の見逃しです。
比較すべきはフェリチン値の理想値
鉄欠乏の診察に際し最も重要なのは、基準値ではなく、あるべき数値となる理想値と比較することです。
この二つは全く異なることを知っておく必要があります。
理想値、栄養素療法からの代謝を正常化する数値です。
(性別、成長期、年齢、妊娠などの生理条件で異なります)
フェリチンが低値を示す病態は、鉄欠乏症しかありませんので、低値を示すと鉄欠乏は確定します※
なお、体内に炎症や悪性腫瘍があると、貯蔵鉄量に無関係にフェリチン値は上昇します。
その場合のフェリチン値の分布は拡散しますので、単にフェリチン値だけを見ると危険です。
必ず体内炎症反応CRPを見て、フェリチン値の正当性の確認が必要です。
(図:体内に炎症や悪性腫瘍がある場合のフェリチン値の分布)

体内に炎症や悪性腫瘍があると、貯蔵鉄量に無関係にフェリチン値は上がりますので、その判定には同時に体内炎症反応CRP検査は必須となります。
※ 大分大学医学部腫瘍・血液内科