見逃される鉄欠乏 - 基準値診断の課題 貧血や血液の中の鉄検査ではなく、体の中の貯蔵鉄(フェリチン)検査を!

なんとなく慢性的な不調、朝起きられない、動悸、息切れ、不定愁訴、イライラ、やる気が出ない、不安症、鬱、発達障害、多動性などメンタル不調


これら症状の原因のほとんどは、鉄欠乏であるにも関わらず、鉄欠乏が見逃されている理由があります

鉄欠乏見逃しの原因は明白です。フェリチン検査を行わないからです。

慢性不調や不定愁訴の原因がわからない理由 フェリチン検査キット

 

鉄欠乏が見逃されている要因は?

鉄不足になる理由は性別と、年齢、妊娠など個人の生理的な条件で異なり、また食に依存します。

鉄不足とは、必要となる鉄分が不足している状態で、たとえば女性の場合、毎月月経で血液を失いますが、その分鉄が補強されないと鉄不足になります。

体内には鉄不足に備え、フェリチンと呼ばれ、鉄を貯蔵しておく仕組みが備わっています。
鉄不足になるとフェリチンから鉄を取り出し鉄を使います。

月経などで血を失うと、フェリチンから鉄を取り出し、赤血球のヘモグロビン生成が優先されます。
そのため、貧血検査であるヘモグロビン値は正常値範囲を維持し、貧血とはならず鉄不足は診断されません。

この状態は、鉄不足にあるという認識が医師と本人にも乏しく、鉄が補給されるまで鉄不足は進みます。
 


もう一つの鉄欠乏が見逃されてる理由

それは、フェリチン検査を行なっても、基準値診断をするからです。

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たとえフェリチン検査を行なっても、臨床判断は基準値を参考にします。
95%の統計的に正常範囲とされる基準値に、検査結果が最低基準値範囲に入っていれば、値が低くとも正常と診断され、鉄欠乏とは見なされません。
 
基準値とは?


比較すべきはフェリチン値の理想値


鉄欠乏の診察に際し最も重要なのは、基準値ではなく、あるべき数値となる理想値・目標値と比較することです。
この二つは全く異なることを知っておく必要があります。

理想値・目標値とは、栄養素療法からの代謝を正常化する数値です。すべての鉄代謝に必要な至適量です。

(性別、成長期、年齢、妊娠などの生理条件で異なります)


フェリチンが低値を示す病態は、鉄欠乏症しかありませんので、低値を示すと鉄欠乏は確定します※

なお、体内に炎症や悪性腫瘍があると、貯蔵鉄量に無関係にフェリチン値は上昇します。
その場合のフェリチン値の分布は拡散しますので、単にフェリチン値だけを見ると危険です。

必ず体内炎症反応CRPを見て、フェリチン値の正当性の確認が必要です。
(図:体内に炎症や悪性腫瘍がある場合のフェリチン値の分布)


 

体内に炎症や悪性腫瘍があると、貯蔵鉄量に無関係にフェリチン値は上がりますので、その判定には同時に体内炎症反応CRP検査は必須となります。
※ 大分大学医学部腫瘍・血液内科
 
鉄の働きとフェリチン