炎症・腫瘍がある時のフェリチン値分布 - CRPとの関係
フェリチン値読み方と注意すべき事項
フェリチンが低値を示す病態は、鉄欠乏症しかありませんので、低値を示すと鉄欠乏は確定します。
なお、低値とは最低基準値ではありません。基準値内であっても鉄欠乏の方は多くいます。ここに気をつけて下さい。
フェリチン値の分布と炎症や腫瘍がある場合のフェリチン値の分布
血清フェリチン値は悪性腫瘍や肝臓障害などの炎症で、貯蔵鉄量とは無関係に上昇します。
そのため、フェリチン値のみを見ると、十分な値があるように見えても、実は偽高値であった実事例があります。
この場合、同時に体内炎症反応CRP検査を行い、炎症反応がなければフェリチン値は確定します。
逆にCRP無しのフェリチン値は偽高値の疑いがあり確定が得られず、フェリチン検査の意味は無いといえます。
もしCRP値が高い場合は、直ちに医療機関での受診をお勧めします。
「フェリチンの数値だけを見ることの危険性」
...つまり炎症やがん存在すると、フェリチンは貯蔵鉄を反映しない検査結果を示すことになります。
...フェリチンが300ng/dl以下であっても、炎症などが存在していることを疑う必要があるのです。(引用:最強の栄養療法「オーソモレキュラー」入門 溝口徹医師薯
血中CRP(C反応性蛋白)とは?
CRP濃度とがん罹患リスクとの関連
CRP(C反応性タンパク質)は肝臓の肝細胞で合成される高分子タンパクです。
感染や何らかの組織損傷・傷害に対する免疫反応が起こると、肝臓での合成が促進しCRP濃度が上昇する特異性のない器質性疾患の血液マーカーです。
血漿CRP濃度の測定は、感染性疾患の診断と管理、一連の非感染性炎症性疾患のモニタリングにおいて臨床的に有用であることが証明されています。
また国立がんセンターの研究では、血中CRP(C反応性蛋白)濃度とがん罹患リスクとの関連について、40~69歳の男女約3万4千人の方々を、平成21年(2009年)まで追跡した結果に基づいて、慢性微小炎症マーカーである、血中CRP濃度とがん罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Br J Cancer. 2022年2月Web先行公開)。
細菌やウイルスに感染すると、体内では、異物などを除去するために免疫細胞が活性化し、その結果として発熱などの急激な炎症反応が起こります。急激な炎症は、細菌やウイルスから体を守るために重要な反応である一方で、その一連の反応の中で、細胞に障害を及ぼす活性酸素などがつくられると、発がんにつながることが知られています。
血中CRP濃度の上昇はがん罹患リスク上昇と関連 血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に、がん全体の罹患リスクは高くなりました。
がんの部位別に行った解析では、大腸がん、肺がん、乳がん、胆道がん、腎がん、白血病において、血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に罹患リスクは高くなりました(図)。
今回の研究から、慢性微小炎症マーカーである血中CRP濃度が高い人では、がんに罹患するリスクが高いことが分かりました。
慢性微小炎症は、感染症により生じる急激な炎症における発熱等などの症状は現れないものの、急激な炎症と同様の働きが体内で起きていることが基礎研究から報告されています。本研究の結果は、症状は見られない慢性微小炎症も、発がんにつながることを示唆しています。
引用:国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)血中CRP(C反応性蛋白)濃度とがん罹患リスクとの関連について