血中CRP(C反応性蛋白)濃度とがん罹患リスクとの関連
CRP(C反応性タンパク質)は肝臓の肝細胞で合成される高分子タンパクです。
感染や何らかの組織損傷・傷害に対する免疫反応が起こると、肝臓での合成が促進しCRP濃度が上昇する特異性のない器質性疾患の血液マーカーです。
血漿CRP濃度の測定は、感染性疾患の診断と管理、一連の非感染性炎症性疾患のモニタリングにおいて臨床的に有用であることが証明されています。
また国立がんセンターの研究では、血中CRP(C反応性蛋白)濃度とがん罹患リスクとの関連について、40~69歳の男女約3万4千人の方々を、平成21年(2009年)まで追跡した結果に基づいて、慢性微小炎症マーカーである、血中CRP濃度とがん罹患リスクとの関連を調べた結果を専門誌で論文発表しましたので紹介します(Br J Cancer. 2022年2月Web先行公開)。
細菌やウイルスに感染すると、体内では、異物などを除去するために免疫細胞が活性化し、その結果として発熱などの急激な炎症反応が起こります。急激な炎症は、細菌やウイルスから体を守るために重要な反応である一方で、その一連の反応の中で、細胞に障害を及ぼす活性酸素などがつくられると、発がんにつながることが知られています。
血中CRP濃度の上昇はがん罹患リスク上昇と関連 血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に、がん全体の罹患リスクは高くなりました。
がんの部位別に行った解析では、大腸がん、肺がん、乳がん、胆道がん、腎がん、白血病において、血中CRP濃度が上昇するにつれて、統計学的有意に罹患リスクは高くなりました(図)。
今回の研究から、慢性微小炎症マーカーである血中CRP濃度が高い人では、がんに罹患するリスクが高いことが分かりました。
慢性微小炎症は、感染症により生じる急激な炎症における発熱等などの症状は現れないものの、急激な炎症と同様の働きが体内で起きていることが基礎研究から報告されています。本研究の結果は、症状は見られない慢性微小炎症も、発がんにつながることを示唆しています。
引用:国立がん研究センター 多目的コホート研究(JPHC Study)血中CRP(C反応性蛋白)濃度とがん罹患リスクとの関連について