鉄剤・鉄サプリの種類、鉄過剰、キレート鉄の海外臨床報告


鉄剤・鉄サプリの種類

鉄といえばヘム鉄か非ヘム鉄で括られていますが、鉄剤や鉄サプリに使う鉄には様々な種類があり、原材料や加工方法によりその副作用や吸収効率が異なります


大まかには、
⚫︎ 保険診療で処方される鉄剤
⚫︎ 一般販売されていない医療用鉄サプリ(保険適応外)
⚫︎ 一般市販されている鉄サプリです

 
保険適応の鉄剤は数種類あり、副作用の差はありますが多くの鉄剤は二価鉄と呼ばれる鉄剤です。
飲むと胃がムカムカする・吐き気・胃痛・嘔吐・便秘などの副作用が人によっては出ます。
二価鉄は胃や腸の粘膜を酸化作用で炎症を引き起こすからです。
その他の課題は、吸収率が低く、また吸収率は食品の影響を受けることです。

医療用サプリは医師が処方し、原料や製法に一定水準を求めるため、品質は高いと考えられますが、一般に高額となります。

鉄剤や鉄サプリの材料と特徴です。
◾️二価鉄鉄剤(そのままでは副作用が強い)
乾燥硫酸鉄:フェロ・グラデュメット 
フマル酸第一鉄:フェルム 
クエン酸第一鉄ナトリウム:フェロミア

◾️副作用が少ないのが三価鉄です
ピロリン酸第二鉄
クエン酸第二鉄水和物
硫酸第一鉄

三価鉄は非ヘム鉄に分類されますが、これを材料にする鉄サプリは、加工方法により刺激性を減らし、吸収効率を高めている商品もあります。

その他に海外ではアミノ酸で結合させたキレート鉄があります。
 

鉄過剰とは?

鉄欠乏の治療でしばしば鉄過剰の可能性があると指摘されますが、それは何で、潜在的な問題は何でしょう?

⚫︎ 鉄過剰とは、必要以上に多くの鉄が体内にある状態で、医学的にはフェリチンが1,000ng/dl以上としています。
⚫︎ 鉄の厳格な生体管理メカニズムが備わっており、経口摂取(口から食べる・飲む)である限り、鉄量が飽和すると恒常機能が働き必要以上の鉄は取り込みませんので、鉄過剰は起こり得ません。
⚫︎ 鉄を体外に排出する機能がないため、フェリチンの高数値は鉄の毒性と共に問題視されます。
⚫︎ ただしフェリチンは、体内に炎症や悪性腫瘍があると、貯蔵鉄量とは無関係に上昇します。単に数値だけを見て判断するのは危険です。


 
鉄過剰が起きる要因は下記です。
⚫︎ 鉄剤を注射や点滴で直接静脈内へ注入する場合(緊急に鉄量を上げる治療)
⚫︎ 輸血(赤血球)を繰り返す
⚫︎ 遺伝子で鉄の恒常機能が働かない時(欧米の白人系の男性方10%、遺伝子疾患)

鉄は酸化機能を持ち、酸化作用で細胞膜を傷つけ、炎症を発生させます。多くの疾患の原因となります。これを鉄の毒性と言います。
この場合の鉄は、タンパクと結合していない、単独で存在する不安定な鉄であり、遊離鉄とも言います。
酸化は鉄が多くある環境下で顕著化します。時に重篤な病態を引き起こします。
そのため鉄過剰問題として扱われますます。
 
炎症・腫瘍がある時のフェリチン値分布


鉄の毒性と生体の保護機能

鉄は体に良いと言われますが、毒性とは何でしょうか?なぜ鉄は毒性があり危ないのでしょうか?また鉄の毒性をどの様に扱うのでしょうか?

⚫︎ 鉄には二価イオン鉄(鉄の原子構造ではFe2+ )と、三価イオン鉄(鉄の原子構造ではFe3+ )が存在します。
⚫︎ 原子構造的にはFe2 は電子が一つ多く、電子を他の原子に渡し易い特性があり、他の原子に電子を渡すことを酸化作用と言います。
⚫︎ 鉄剤や鉄サプリは、種類によりFe2+とFe3+があり、 それぞれ吸収経路が異なります。
⚫︎ Fe2+単独になると酸化機能により酸化作用が働き、この鉄の酸化作用をうまく使い鉄代謝が行われます。この時活性酸素の発生や、酸化作用が鉄代謝以外でも起きますので、それを鉄の毒性と呼ばれます。

 

⚫︎ Fe2+はそのまま入り、Fe3+は細胞に入り込にはFe2+ に変換します。
吸収されたFe2+は酸化作用がありますので、タンパクと結合してFe3+状態で体内に存在します。フェリチンなどです。なおヘモグロビンタンパクは生成時にFe2+の鉄を包みます。
⚫︎ タンパクと結合していないFe2+を遊離鉄と呼び、酸化機能を持ちます。この遊離鉄が血管や臓器に沈着すると、酸化作用で細胞膜を破壊し、炎症を発生させます。多くの疾患の原因です。
⚫︎ 鉄が過剰な環境下で顕著化し、時に重篤な病態を引き起こすため、鉄過剰状態が問題となりますが、あくまでも遊離鉄が原因です。

⚫︎ この毒性がある鉄を安全に管理する仕組みは二つあります。生体は鉄をタンパクと結合させFe3+ で安全に保管する機能を持ちます。
生体は鉄の毒性を抑えるために、タンパク質で鉄を包み電子を受け取りFe3+ 状態にし、安全な鉄状態で管理します。
フェリチンや血液中の鉄はFe3+です。
このように毒性(酸化作用)を抑えるための生体メカニズムが働き、安全に管理しています。

⚫︎ また鉄量が飽和状態になると、恒常性維持機能でそれ以上過剰な鉄を吸収しません。
⚫︎なお発生した活性酸素(主に過酸化水素)はカタラーゼという抗酸化物質を細胞内で作り活性酸素を無毒化します。カタラーゼは鉄代謝で作られます。

つまり、経口で鉄を摂取すると、毒性保護と飽和管理機能、抗酸化機能があるため、問題は起きることはないと考えられます。
 

キレート鉄について

日本ではキレート鉄の懸念が見受けられますが、なぜでしょう?

世界的には認識されている鉄剤の問題と、それを解決するキレート鉄の研究開発・安全性検証・米政府機関の認定事実を見てみましょう。

 
⚫︎ これはビスグリシン酸第一鉄(フェロケル®:アミノ酸で結合させたキレート鉄サプリ)で、消化器官への副作用が少なく吸収効果が高いことが特徴とされています。
⚫︎ 海外では硫酸第一鉄が広く流通していますが、胃を荒らす・吸収効率が悪いと認識され、その代替えとしてビスグリシン酸第一鉄(キレート鉄)が開発され、今は米国をはじめ世界で流通しています。
⚫︎ 日本ではキレート鉄は危ないので使わないようにと、一部の医療機関では警告されています。
危険とする根拠は、本来鉄を吸収する経路ではないため、鉄管理メカニズをバイパスし、鉄過剰を引き起こし危険であるとのことです。
⚫︎ また輸入品のみであるため、使用法や使用量の基準が米国人であり、日本人への適量表示や制約がないのは危険との指摘もあります。
⚫︎ 方や、吸収効率が非常に高く副作用が無いため、重度の鉄欠乏診断の場合、短期的にキレート鉄を積極的に服用し、安定後は量を減らす、または通常の鉄サプリに変更する方針の医師もいます。

鉄を服用する方、またはキレート鉄はフェリチンの上昇が早いので、鉄過剰が心配な方は、定期にフェリチンを測ることを推奨します。
 

キレート鉄(フェロケル®)の米国DFA承認関連文書

医薬品評価研究センター アプリケーション番号: 208612Orig1s000 非臨床レビュー 

 
米国の食品医薬品管理薬物(FDA)保健社会福祉省公衆衛生サービス評価研究センター発行の、経口避妊薬について、キレート鉄(フェロケル®)に関する承認記述があります。
また豚への4世代に渡る毒性継承検証、鉄の沈着検証もあります。
下記に翻訳引用します。オリジナルは下記URLをご参照ください。
 
キレート鉄(フェロケル®)の米国DFA承認関連文書


キレート鉄(鉄ビスグリシンキレート)の吸収経路

鉄ビスグリシンキレートは非ヘムと鉄吸収経路をめぐって競合する

⚫︎ キレート鉄は一般の鉄剤や鉄サプリと違った吸収経路をバイパスし、鉄飽和の恒常性機能が働かないため、鉄過剰をきたすとの懸念があります。
⚫︎ 臨床検証で、ビスグリシン酸第一鉄の吸収は、硫酸第一鉄(非ヘム鉄)の吸収と競合することを突き止め、結論として従来の吸収経路を使うため、鉄飽和の恒常性機能は働くことを示唆しています。

 
下記は研究報告書の翻訳のリンクです。
前半の結論の後に、キレート鉄を支持する理由もあり、日本での議論とは真逆です。
 
キレート鉄(鉄ビスグリシンキレート)の吸収経路臨床報告書

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※ CRP検査が無いと、フェリチン検査値は確定できません。(臨床検証 炎症・腫瘍がある時のフェリチン値分布)
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